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独り言 のち 時々猫

2011年09月 | ARCHIVE-SELECT | 2011年11月

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中勘助「銀の匙」

まるで、長い長い詩を読んでいるような錯覚に陥る。
抒情的で、美しく、儚く、清廉で、侘しい。
(長ったらしくてすみません、でも、全てが当てはまるのです)

文章は現代風に、読みやすく工夫されているが、
それでも、最初の何ページかは苦労する。
いかにも、「昔の本」という感じの文体に慣れていない。
どこが文章の切れ目か、わからないし(^_^;)

読み進むうちに、徐々に慣れて来て、
描かれている情景が目に浮かぶようになると、
今度は表現の繊細さにびっくりする。

特に、擬態語や擬音語が秀逸なのです!
それは、懐かしくて新鮮な響き。

(飴を)「こっきり噛み折って吸ってみると」
「むんむと舞いあがる埃」
「香(こう)の薫(かおり)がすーんともれてくる」
「小山のふところにこっとりとたった草ぶきの建物」

次々と出てくる表現に、うっとりとしてしまう。

遊びほうけて、幼稚で、
気苦労も何もないと思われがちな、幼少時代。
実は、何でもないことに哀れを感じたり、
突然襲ってくる寂寥感に恐怖を感じたり、
子供なりの感受性で、過ごしていたことを思い出しました。

それは、中堪助の描く主人公ほどではないけれど、
私にもある、忘れかけた遠い昔の記憶。

灘中学校の先生が、三年かけて授業でこの本を読み込んだそうです。
素敵な授業だったのだろうなぁ。
羨ましぃ。

銀の匙





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