須賀敦子「コルシア書店の仲間たち」

ミラノのコルシア・デイ・セルヴィ書店に関わる人たちを、
たんたんと描いたエッセイです。
さらりとした文体なのに、何故か最初のとっつきが悪く、
知らない人を暖かく迎え入れるというよりは、
冷たく突き放されているような気がしました。
別れ、情熱、疎外、孤独などを、感情移入して描くのではなく、
事実として一歩引いて、まるで風景画のように描いています。
そして、最後は一連の絵画を見終えて、
やっと全体象が朧げにわかったような、心細いような、
そんな余韻が残りました。
イタリアの歴史や、思想などに知識があれば、
もっと楽しめたのかも知れません。
今までに出会ったことのない読書感を味わえる本です。
是非、再読したいと思いました。
その時には、何か違うものが見えてきそうです。
☆二つ
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