森下典子「日日是好日」

樹木希林さんの最期の映画となった原作本ですね。
茶道の話なのは、説明するまでもないのですが、
とても懐にストンと落ちた作品でした。
私も大学生の頃に、裏千家のお稽古に通いました。
友達のお母様が先生でしたので、ついつい甘えてしまい、
あまり上達はしませんでした。
季節を先取りした美しい和菓子に惹かれて、
お稽古に向かっていただけかも知れません。
そんな不真面目な私が、今でも鮮明に覚えている事があります。
冬のお稽古のある日、
炉にかかったお釜からは、シーシーと湯気が上がり、
時折炭がはぜ、外ではヒヨドリがさえずっていました。
お茶室の障子には、庭の木々の影がゆらゆらと映り、
先生の座っていらした姿はシルエットになりました。
その時、そこにただ存在している自分を強く感じ、
「あ、私、きっとこの一瞬を忘れない」
と確信したのです。
それが何だったのか、ずーっとわかりませんでした。
そしてこの本の
「五感で自然とつながること」
「雨の日は、雨を聴くこと」
などを読んで、少しだけ納得がいったのです。
お茶会は面倒だし、
高い茶道具やお着物もありませんが、
もう一度、一からお茶を始めてみたいと思わせてくれた、
貴重な一冊となりました。
そうか、お茶って、素敵なんだな〜
☆2.5
| 本箱 | comments(-) | trackbacks:0 | TOP | HOME