藤岡陽子「波風」

「てのひらの音符」がとても良かったので、
藤岡陽子さんの本をもう一冊読んでみました。
そして、やっぱり、この本もアタリでした。
7編からなる短編集です。
「波風」
かつて同僚だった看護師に頼まれて、婦人科医だった男性を沖縄に尋ねます。
沖縄の熱いサトウキビ畑の中で、一歩を踏み出す二人の女性のお話。
「鬼灯(ほおずき)」
「母はなぜこんな冴えない男と結婚したのだろう」
突然倒れた母の手術が終わるのを待つ姉妹に、
母の再婚相手である父が話し始めます。
「月夜のディナー」
母の再婚後、親元を離れた姉と弟。
結婚を明日に控えた弟が、「おかあさん」と呼んだのは、
二人をわが子のように大事に育てた叔母さんでした。
「テンの手」
高校野球の天才と呼ばれたテンとその親友の、
悲しくて優しくて切ない物語です。
違う形のハッピーエンドにして欲しかった・・・
「結い言(ゆいごん)」
女性ばかりの着付け教室に通う高齢の男性。
実は着物が似合う妻のために、他人の目など気にせず、
不器用なりに一生懸命着付けを習っていました。
誰もが憧れる夫婦像が心にしみます。
「真昼の月」
老人ホーム入居者である老女は、娘のことを頑なに知らないと言い張ります。
それにはある理由が隠されていました。
「デンジソウ」
忙しい整形外科病院で行われている不正に気づき始める看護助手と、
その不正を暴こうとする記者。
デンジソウは、四葉のクローバーに似た水草だそうです。
読んだらすぐに忘れてしまう私が、
それぞれのお話を覚えていました。
アマゾンでも買えず、図書館で借りて読みましたが、
その価値はありました!
☆三つ弱
| 本箱 | comments(-) | trackbacks:0 | TOP | HOME